「太陽の塔」という小説が最高で、喫茶店でニヤニヤしながら読んでしまった。特に主人公の悪友(飾磨君)の独白がおもしろくて仕方なかったので、引用しておく。
飾磨、かく語りき
「ここに緑の牧場があると思ってくれ。ぐるりと柵で囲った中にたくさんの羊がいる。何も考えずにのうのうと草を食べてはごろごろして、それで結構幸せなやつもいる。
俺は本当に羊なのだろうか羊ではないのではないか羊ではない自分とは何者なのかと不安になって呆然としているやつもいる。
柵の外にちょっと足を出して、また戻って来ては、『俺さあ、実は外へ出たことがあるんだぜ』と得意になって吹聴しているやつもいる。
それを感心して聞いてるやつらもいる。
柵の外へ出たまま、どこかへ行ってしまったやつもいる。
そのたくさんの羊たちの中に、一人でぽつんとたっているやつがいる。
そいつは自分が羊であることがわかってるし、実は恐がりだから柵の外へ出ようとは思わないし、かといって自分が幸せだとも思ってない。
ぱっと見るだけなら、そいつは他の羊とあまり変わらないように見えるだろう。
でもよく観察してみると、そいつはひたすら黙々と、すごく凝った形のうんこをしているのだ。
確かにそれはただのうんこだ。でもひどく凝った形だ。とは言え、やっぱりただのうんこだ。
そして、その羊が、俺だ」
学生の頃の頑張るほど泥沼にはまるあの感じが見事に活字になってます。万人に薦められる本ではないけれど、万人に薦められる本なんて所詮その程度のものであり、このブログを読んでいるそこのオタク気味な貴方におすすめしたいと僕は思う。単純におもしろかった。
そう8月の半ばあたりから本を読む余裕ができたのである。もしかしたら笑えたのは本の内容もそうだが、自分に余裕があったからなのかもしれない。
4月から忙しかったので、いまはこの読書にあてられる、僅かなゆとりがとてもうれしい。