「たんなる数字の羅列も綺麗なグラフにすると、そこから真実が浮かび上がってくる。」
・・・ような気になってしまうのは困りものである。
下はイラク駐留米軍における月毎の死者の数を表したグラフである。
「おわかりですか?多い時には今でも月に100人もの兵士が命を落としているんです。イラクでの米軍がいかに危険な状態か明らかです。これだけ多くの死者が出ているのは、もう作戦自体に無理があることの証拠で、責任者は辞任の上、イラクのような危険な地域への派兵はそっこく取りやめるべきである!!!」
と古館伊知郎あたりがパネル付きで解説したら、僕は深く頷きながら、古館よくぞ言った!と思うに違いない。
下はベトナム戦争時の米軍における月毎の死者の数を表したグラフである。上のグラフを元にベトナム戦争のデータを書き足してある。数字は変わっていないが、イラクでの死者数のもつ意味が上のグラフとは変わる。
NHK の上品な感じのキャスターが「イラクでは今も駐留米軍による復興支援活動が行われております。現地では今もテロが散発的に発生していますが、ご覧の通り、イラクに派兵されている米軍の死者数は過去の作戦の時と比較して激減しています。これは装備の近代化や中長距離ミサイルの発達によるもので・・・」と原稿を読み上げたら、やはり僕は深く頷きながら、軍隊の近代化はすばらしい!と思うに違いないのである。
さらに、上のグラフに第二次世界大戦を追加してみる。
「これ!これだから最近の若い世代は元気がない!見てこの図!!第二次世界大戦のときなんか、もうみんなこうやって竹槍でアメリカの飛行機落としてたんだから!ベトナムの人やイラクの人もこのくらい頑張らないとねぇ。」みのもんたならこの位コメントして、翌々日くらいに謝罪しそうだ。
そんなわけで、僕らが目にするグラフや図にはかならず制作者によるメッセージが含まれているので、グラフだから公正と無条件にありがたがるのはやめようね。というメッセージでした。
ネタ元はInfovisというデータ可視化のカンファレンスでMatthew EricsonというNYTimesのグラフィックディレクターの基調講演。
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