「2週間後にアメリカに出張することになった。今から英語をなんとかする方法求む」と友人からメールがあった。
そんな夢みたいな方法があるならこっちが聞きたいと突き放そうと思ったのだが、よくよく考えてみれば数日あれば英会話能力をあげる方法はいくつかある。というわけで、悩める友人のために私の経験から即効性のある英会話力アップ方法を紹介したい。いずれも2週間といわず、その気になれば1日で出来てしまう簡単な方法である。
大きな声で話す
いきなり昭和の香り濃厚な方法で申し訳ない。だが、騙されたと思って普段の2倍の声で話してみてほしい。
文法が正しくても、言葉選びが適切でも、いくら良い事を言おうとも、声が小さかったら相手に届きようもない。言葉に自信がないと、声が小さくなってしまいがちだが、恥を捨てて大きな声で話してみよう。「あれ、俺ってこんなに英語しゃべれたっけ?」というくらい相手に意図するところが通じるはずだ。大げさに言えば世界が変わる。
あなたが「英語が通じない」と思っている状態の多くは英語以前に声が伝わっていないということがわかるはずだ。
それだけではない、声の大きさはあなたのやる気をはかるバロメーターの一つとしても使われている。極東の島からやってきた小さい人か細い声でぼそぼそ喋っていたら相手に、「こいつは特に伝えたいことがないんだな」と思われる。大きな声で話すだけで「今度日本から来た彼は、明るくて元気なやつだ」と好感度アップ間違いない。この辺は理屈ではない。毎朝早く出社している同僚が(実際はボンクラなのに)、「彼は熱心だね」と専務から評価されるのと同じことだと割り切って、3倍大きな声で話してほしい。
また誰かと話しているときに、相手が耳をこちらに向けるしぐさをしたらそれは「聞こえないので、大きい声で話してほしい」というジェスチャーなので4倍大きな声で話してほしい。
大きな声で話すことに副作用はない。そして練習も簡単だ、なんでもいいのであなたの得意分野の文章を小一時間音読するだけである。レストランで店員さんに「すいませんーん」と声をかけるときの声量を目安にひたすら音読して、大きい声で英語をしゃべる癖をつけてしまえばいい。
接近戦:戦い(会話)はこの距離で行われる。
英語の日を作る
2週間後に実践を控えている人の場合、英語を「勉強」していたら手遅れである。今すべきは英語に慣れること、あるいは浸ることである。「~~英語術」みたいな本はどこかに閉まって英語に触れよう。そのためには英語の日を作ることをおすすめしたい。英語の日では朝から晩まで日本語厳禁である。テレビはNHKを副音声の英語で聞くとか、いつもの新聞のかわりに海外のニュースサイトを見るとか、家族と話す時も「醤油取ってを英語で言うと、、、」という風に常に英語を意識することである。意外となんでもないフレーズを英語で言えないことに気付くはずだ。
ベルリッツなどの英語スクールが出張直前コースが狙うのは、まさにこの効果である。ベルリッツの直前コースは朝から晩まで(なんと昼食まで!)講師と英語で話すそうである。お金があるならそういうコースを受講するのも効率的な選択だと思う。
良いスーツ/靴を買う、髪の毛を切る
言葉でのコミュニケーションが拙い場合、見た目や服装がより相手に強い印象を与える。喋れないなりに、というか喋れないからこそ見た目だけはビシッとすることは大事である。「ミーティングした外人が自分の部下を上役だと勘違いした。」などという悲劇は見た目をおろそかにした結果であろう。
身だしなみに気を使うと、取引先・レストランで待遇がよくなるだけでなく、旅の道中でトラブルにあう確率も減る。人から聞いた話だが、ポルトガルの有名な観光地にあるスリが横行する通りでスリに合わないたった一つの方法は、安い服を着てウエストバッグをもつのではなく、高そうスーツ(と靴)を着て颯爽と歩くことだそうである。スリの気持ちになってみれば、ビシっとしている人が狙いにくいというのは自然な事だと思う。
なお、IT系の場合は下手にスーツを着るとスーツ族と思われて、Tシャツ族とコミュニケーションが難しくなるなどの問題がある。つまり仲良くしたい人種と同じ格好をしておくことも大事ということである。
自己紹介を用意する
他のことについてしゃべれなかったとしても、自分の事くらいは語れるようにしておこう。名前、部署、仕事内容などは必ず聞かれる。入社して何年、過去に携わった業務、現在行っている業務をまずは日本語で書いてみて、それを英語に翻訳してから繰り返し練習するしかない。
多くの社会人にとって仕事内容を説明するのは母国語でも簡単な事ではないと思う。誰に向けて自己紹介するかによって内容も変わる。にも関わらずぶっつけ本番で英語で自己紹介ができると思っている人が多いのは残念なことである。
僕自身、必要十分な自己紹介が手来ていないのを自覚している。まずは求められた時に送りバント程度の自己紹介ができるようになることを目指そう。徐々にヒットやホームランを狙えるようになるはずだ。
自己紹介がうまくできると、場の雰囲気がなごむだけでなく、相手がこちらの関心や興味に配慮した話をしてくれるようになる。自己紹介は出会い頭に行われるので、これがうまくいくかいかないかが会議の成果に大きく関わってくる。
聞き直す/質問する/相槌をうたない
一言で言えば「分かったふりをしない」ということである。わざわざ日本から来てるんだから、説明を理解するまでは帰らない!という気概で質問し続けることが大事である。それを怠って安易に相づちをうっていると相手が分かってる前提でさらに別の話を始める。そうなる前に分からないことは分からないと言おう。もう一回お願いしますの言い方は色々あるけど、 Can you repeat that? / Could you say again? / Say again. / Pardon me. / Sorry. とか繰り返してると相手が分かりやすく話してくれるようになるはず。
また、ミーティングをした場合ほぼ100%の確率で「質問はありますか?」と聞かれる。これは就職活動の面接における「最後に質問ありますか?」と同じ位置づけだと思って欲しい。つまり質問がなくとも何かをひねり出さないといけない状況であるということである。質問しよう。拙くとも、的外れでもいいじゃないか。こっちは日本人なんだし。
ちなみに質問するときも、聞き直すときも大きな声で!
手土産大作戦
郷に入っては郷に従うのが基本ではあるが、短い時間で自分を印象づけるためにはあえて異物であることを強調する振る舞いをしてもいいのではないかと思う。たとえば手土産を持って行くなど海外ではあまりしないらしいが、1000~2000円で話のネタになると思えば安いものである。ただし、日本慣れした外人は意外と多いので、ベタなお菓子は避けた方が無難だ。
過去の経験から安くて好評だったのはロイスのチョコレートチップだ。たいてい「ポテトにチョコレート?なにそれ!」といういい反応が帰ってくる。成田空港のゲート内で売っているので出発間際にどうぞ。
以上である。英語圏を前提に考えたが、ほとんどが言語以前の問題なので、おそらくどの言語/地域にも応用できると思う。
またダルダルのTシャツがトレードマークの友人からのメールがこの記事の発端であるため、身だしなみの項がちょっとくどかったかもしれない。老婆心だと思って欲しい。
気をつけて!そして実りある出張を!!