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Jan 28, 2011

人前で話すことについて語るときに僕の語ること

先週からずっとトレーニングの講師をしている。改めて思うのだけれど人に何かを伝える仕事は難しいが、やりがいがある。自分で言うのもおこがましいのだがそういう人前で話す仕事では良い評価をもらうことが多い。恥ずかしいけれど、誰かの役に立つかもしれないので、僕が普段意識している基本を紹介したいと思う。


他人から預かった時間を大切にしたい


目の前にいる人たちはみな、忙しい中時間を作って僕の話を聞きにきてくれているはずである。だから同じことを伝えるなら話は短い方がいいと思っている。60分の枠があっても伝えるべきことを伝えたら早く終わらせたい。それには短い時間で効率的に中身を伝える必要がある。
だから準備には時間をかける。今でも新しいテーマの時は必ず本番と同じ時間のリハーサルをしている。当然だと思われるかもしれないが実際にはこんな基本をやってない人が多い。話していて「えっと、ちょっと前のスライドに戻りますが、、、」というように話とスライドの順序があっていなかったり、「あ、この数字はちょっと古いんですが、、、」みたいなことを本番で気づく人がどれだけ多いことか。こういう初歩的なエラー、時間の無駄遣いは声をだしたリハーサルするだけで100%防げる。
こう考えることもできる。発表前に僕が独りで30分頑張って何かを調べて本番で余分な話を3分カット出来たとする。その講演を100人が聞いていたら100人 x 3分 = 300分の時間の節約になる。僕が30分がんばるだけで、みんなの300分を別の有意義なことにつかえるかもしれない。そう考えると人前にたつ人の責任は重く、やりがいがある。

次に何をすべきかを提示したい


どんな時でも話には伝えるべきメッセージがあるはずである。「はずである」と書いたのは、社会人になってから間を持たせることだけが目的の止めどない話を聞かされることがあるからである。ちょっとかなしい。
だから僕は常に「これを聞いているあなたにこれをして欲しい」というお願いをするようにしている。何をお願いしたいのかを考えることがつまり伝えるべきメッセージを考えることになっている。

そのメッセージに対して「それは違う」などの反論がでることはしょうがないというか、むしろ一石を投じただけ価値があったと考えるべきだ。恐ろしいのは無反応で終わってしまうことである。

難しいことを簡単に伝えたい


専門家としての話を期待されているときに思うのは、難しいことを噛み砕くことが僕の存在価値であるということである。込み入った内容も工夫してシンプルに説明するように心がけている。専門用語や横文字を乱発し、聞いている人を煙にまく「自称専門家」は論外である。

分かりやすく伝えるためのこつは本質に関係ない枝葉を刈り取ることだ。そして枝葉と切り落としてはならない幹や根を峻別するためには伝える事柄を深く理解する必要がある。勉強を地道に頑張るしか無い。

ちなみにこの能力が際立っているのは最近テレビで活躍している池上彰である。あの域に到達するのは難しいとしても、近づくための努力はしなければならない。

できればかっこいいと思われたい


モテたいわけではないが、やはり嫌われるよりは好かれたいものである。話す内容は重要だが、それを聞いてもらうためにも「あ、こいつはなんか面白い話をしそうだな」と思ってもらえる雰囲気を作る必要がある。
笑顔であるとか、声量がちゃんとあるとか、場にあった服装であるとか、つかみのジョークとか。些細な心がけはきっと聞いている人にも伝わると信じている。

反響を謙虚にうけとめたい


講演の後に会場で参加者が行うアンケートなどの結果は真摯にうけとめてやろうということである。数多く寄せられる意見の中にはいわれも無い批判(と本人には感じられる)も含まれていたりする。自分が追求たりなかったと薄々感じていた箇所をずばり指摘されることもある。

こんなマゾヒスティックな行動をおすすめする理由は、面と向かって感想を述べてくれる人たちは大抵褒めてくれるからである。それだけを聞いていれば自分の講演や講義がうまくいったという錯覚に陥る。だが、実際には面と向かって僕を評価してくれたのは、100人の聴衆の中のたった2人なのかもしれない。それ以外の多くの人の意見を知るにはアンケート結果などに目を通すしかないのである。

3年くらい前に自分の講演に対するアンケートのコメント欄に「うわついていた。もっと落ち着いてまじめな話をできる人をよんでください。」という意見を見つけた時は悲しかった。分かっている。全員を満足させるような話は出来るはずが無いということはよく分かっている。それでもできるだけ良い方向に近づきたいと思うから、僕はアンケート結果を読んでいる。

[caption id="attachment_2335" align="alignnone" width="300" caption="たいてい恐る恐るみるアンケート結果"][/caption]

以上が、技術というよりは精神論に近い心がけ5つである。無理矢理に一言でまとめるならば聞いている人への敬意をわすれないということになる。スライドの作り方、話し方、外国語力などといった技術についてはいろいろな本で語り尽くされていることだが、それは相手への敬意という土台の上に初めて成立する話だと僕は思っている。