これは釣り経験ゼロの僕がベテラン釣り師達の助けを得て、ヒラメ釣りに挑む五日間の冒険物語である。文章が思いのほか長くなってしまったが、お時間のあるときにハンケチ片手に読んでいただけたら幸いである。
発端
「ところで、連休はなにをしてますか?」ひとしきり仕事関係の込み入った話が終わった後、電話の向こうの先輩Yさんが唐突につぶやいた。
「最近忙しかったし、温泉でボーっとしたいと思ってます。」
「そうですか。ヒラメ釣りをしたかったら岩手の私の実家にきてください。私は連休中釣り三昧の予定なので。」
船に乗って海で釣りをするのは僕の人生における死ぬまでにやりたい3つの遊び*1の1つである。僕は迷わずYさんのお言葉に甘え、9月後半の連休を岩手で過ごすことに決めた。目的はYさんの実家でヒラメを釣ること。そして温泉でのんびりだらだらすることである。
ちなみに僕は釣りをしたことがない。幼い頃に2度ほど釣りにでかけたことはあるが、それは釣りとよべるほどの経験ではなかった*2。しかも海か山かと問われれば迷わず山と答える海嫌い人間であることを最初に白状しておく。
1日目(9/19 土曜日)
出発前日の金曜日は仕事の後、友人と飲みに出かける約束があった。帰宅後の深夜にブックオフに出かけ、この旅行で読む本を仕入れる。硬軟交えて全部で10冊ほど。温泉に入りながら読むための本、釣りをしながら船の上で読む本、旅の車中で読む本などいくつかの場面を想定して本を選んだ。が、その想定がいろいろ間違っていた事はこの後明らかになる。
新幹線で岩手
東京を朝6時に出発する最も早い東北新幹線で岩手を目指した。早朝にもかかわらず東京駅はごった返していたが、始発を乗り継いでいったおかげか、何とか自由席に座ることができた。
朝6時台から殺伐とごった返す東京駅の様子
降りたのは水沢江刺という寂しい駅。わざわざ迎えにきてくれたYさん、そしてそのお父さんとなんなく合流して、ここからは車でYさんの実家を目指す。岩手県は小沢幹事長のお膝元、民主党のポスターが街道にまさに「隈無く」貼られている。
11時頃、Yさんの実家についた。周囲を山に囲まれ、窓からは田んぼが見渡せる大きな家だ。この家にはご両親とYさんの弟さんと犬が暮らしている。お父さんは豪放磊落をまさに地でいく人で、家族とのやりとりを見ていると最近失われつつ家父長制の砦という感すらある。みなさんに挨拶を済ませるが、犬のネネだけは「うーうー」と低く唸り、お母さんの背後に隠れてこちらを窺っている。隙を見せたら襲いかかられそうである。気をつけねば。
早速釣りにいく
縁側を見ると、既に4人分の釣り道具が並んでいる。釣り道具と一言で言うが、素人目には恐ろしい量である。竿、はりとおもりなどが入った箱、たも、ライフジャケット、クーラーボックス、ボートのエンジン(船外機)の燃料などで車の後部座席が埋まっていた。
その道具の量に圧倒されつつ、男4人でY家から車で5分の崎浜へ早速釣りに出かける。ここにはY家のマイボートが繋留されているのである。マイボートという言葉で察して欲しいのだが、Y家は相当の釣り好き一家である。陸に上がった状態のボートを海に下ろし、越喜来湾へこぎ出す。
いざ海へ
フォークリフトや大型のウインチを駆使してボートを海にうかべ、荷物をボートに詰め込んでいる時点でおそろしく贅沢な遊びをしていることを実感する。
弟さんが運転して湾の中へ。ボートが時速にして何キロでているのかはわからないが、視線が低いため、スピード感がすごい。三陸海岸特有の複雑な地形が見せる曲がりくねった海岸線と黒々とした森が美しい。海水は温かく、その昔新潟の直江津にある海水浴場で経験した磯臭さがない。というわけで「海っていいもんだな」と素直に思った。
程なくしてボートはヒラメがいそうなポイントに到着し、Yさんの手ほどきを受けながら釣りの用意をする。ヒラメはどう猛な魚なので、えさには生きたイワシを使う。イワシの頭に針を刺し、これを海に放つ。海底にいるヒラメはだいたい水底から2mまでの魚に反応するらしいので、自分のイワシをひたすらその高さにキープするのである。
「え~~、生きたイワシの頭に針をさすなんて怖~い!」
という気がしなくもなかったが、そんなことを口にした日にはY家の屈強な男3人によって自分自身が生き餌にされかねない。沈黙は金である。イワシを暴れさせないように固定して、一息で針を入れる。針のカエシがきちんと外に見える状態まで刺さないと逃げられてしまう。
人間やればできるもの
餌を落としたら、後は「海底から1mをキープする。ポイントを変える時には竿をあげる。イワシがへばってたらつけ直す。再度餌を落とす。底を切る。」と慣れない作業が延々と続く。お父さんは「ヒラメ釣りは(常にしゃくったりする必要がない)暇な釣りだから。」と言っていたが、初心者には十分忙しい。船の上では暇だろうと、本を選んでいた*3数日前の自分はあまりに無知であった。
なれない作業に悪戦苦闘している間にもYさんと弟さんはヒラメを一枚づつ釣りあげた。一枚は小さいのでリリース。もう一枚も、普段のY家ではリリースするサイズであるらしいが今日はキープ。ちなみに弟さんはボートを運転しつつ、ヒラメがいそうなポイントを探しつつ、釣りをしているのである。風と波を読み「あそこで風が変わってるから、あのへんにすっか。」とお父さんと相談している姿はそれはそれはかっこいいものである。ヒラメの気配が薄いのでこの日は3時間ほどで諦めて帰途につく。
この日の釣りの目的は正真正銘初心者の私に基本的な動作を教えることと、船酔い耐性をみることであったようだ。船酔いに関しては自分でも心配していたのだが、平気であった。
その晩
夜は弟さんが前日釣り船に乗って釣った新鮮なイカとその日釣ったヒラメが食卓に並んだ。今までに経験のない新鮮なイカを堪能した。
ヒラメのお造り
イカの煮物。はらわたを抜いていない!新鮮なイカはそのまま煮た方がおいしい
地元でも珍しいイカの白子汁。白子そのものはあまりおいしくない。そこからでるダシを味わうものとのこと。
生き餌のイワシをそのまま塩で煮た「塩炊き」とよばれる料理
ヒラメの刺身はぷりぷりで充分においしかったが、50cmを超える大きいヒラメだとより美味しいそうだ。一般に野菜の場合、小さい方が美味しい。肉も子牛や子羊が珍重される。それを考えると大きいヒラメが美味しいというのは興味深い。
今日の感じだと明日は釣れるんじゃないかなどと、みんなで話しつつ酒を飲む。Yさんの飲み方を知っていたので、驚きはしなかったが、やはりY家は全員いける口であった。お土産をシングルモルトにしたのは正解であった。
翌日5:30の出発に備えて20:00過ぎには寝る。用意してもらった布団に入るとあっという間に熟睡した。明日はいよいよ本格的な釣りになる(はずである)。
2日目 (9/20 土曜日)
朝4:30に起きた。弟さんが淹れてくれたコーヒーを飲みながら天気予報をみる。低気圧が近くにいるが、岩手県南部の予報は曇り。悪くない。ところが家の窓をあけてみると、強い風で山が「ビューーー」と鳴っていた。海が荒れてないことを、そして今日もボートで釣りにいけることを祈って港に向かう。
想定外の強風 「ヒラメか?温泉か?」
港について、沖を見やると白い波が立っている。港からは小さく見えるが、その場に行けば軽くボートをひっくり返すほどの強さの波らしい。弟さんが電話すると、地元の釣り船も今日は出航を断念したことが分かった。
「今日は無理だ。」
Y家満場一致で今日の釣りは断念。悪天候ばかりはどうしようもない。自然相手の遊びにはこういうことがある。家に戻って、朝8時くらいまで寝直す。
朝5時の海はこんなに暗い
実は当初の計画ではこの日釣りに行き、まんまとヒラメを釣り上げ、その後は平泉か花巻の温泉でのんびりする予定であった。そのために大量に本も持ってきた。しかし予定通りに今日温泉に旅立つと、今回の旅行でヒラメを釣るチャンスはなくなる。Y家滞在を一日延ばしたとしても、明日海に出られる保証はない。一方でY家の面々は翌々日には千祥丸という釣り船にのってヒラメ釣りにいくことになっていた。ボートで海にでるのと比べて、釣り船は本職の船長が魚群探知機を使って探す「釣れるポイント」で釣りができる。もちろん釣れる保証はないが確度は高い。
「ヒラメか?温泉か?」
悩む余地はあまりなかった。温泉はいつでもいける。リラックスは死んでからもできる。しかしヒラメを釣るチャンス、しかも3人のコーチ付きで釣る機会はこの先の人生にもそうそうあることではあるまい。温泉をあきらめ、お父さんに釣り船に一緒に乗せてもらうようにお願いし、せっかくなので翌々日までに岩手の海岸線を堪能する一泊二日の旅にでることにした。全ては翌々日のヒラメ釣りのためである。
三陸海岸鉄道の旅
岩手の海岸線、東北地方の右サイドライン際には鉄道が走っている。
三陸鉄道南リアス線吉浜駅に近づく特別車両
この日釣りを諦めた僕は、三陸鉄道の南リアス線吉浜駅を出発し、JR山田線にのりつぎ、さらに北リアス線で岩手北端の町「久慈」を訪れた。「訪れた」というより「たどり着いた」という表現が正しいかもしれない。決して久慈を目指したわけでなく、泊まれるところを探しながら電車に乗っていたらそれがたまたま久慈だったのである。久慈ではちょうどこの日地元のお祭りが開催されていた。
お祭りの様子
ここまで来て、人混みにもまれる気分でもなかったので、観光案内所で自転車を借りて海岸線をサイクリングした。
愛車マーくん号、時速40kmで国道を全力疾走したところ、追い越していく自動車の助手席の小学生に拍手された。
薄い夕焼けと海
夕食後に10年ぶりくらいにパチンコをした。こちらでは1円パチンコというものがある。要は玉貸の値段の安い、ローリスクローリターンのパチンコである。パチンコ台の進歩と「稲中卓球部」の再現度の高さに驚きつつ500円だけ遊ぶ。本を読んで22:00頃就寝した。
海女さんが可愛いというだけで大変なことに。参考
3日目 (9/21 月曜日)
7:00に久慈を出て、以前から一度訪れてみたかった、青い洞内湖で有名な龍泉洞を目指した。朝ご飯は旅館の人に握ってもらったおにぎりだ。唐辛子味噌のような具のおにぎりが美味だった。連休のせいだろうか三陸鉄道は朝から混雑気味である。
形容しがたい龍泉洞
目指す龍泉洞は電車でも車でも不便な場所にある。久慈からだと三陸鉄道北リアス線の小本駅で下車し、そこから20分ほどバスに揺られる。電車は1時間に1本、バスは2時間に1本という本数の少なさが災いし、7:00に久慈を出て龍泉洞についたのは10:30頃になった。
明かりは水深40mの位置にセットされている。その深さまでくっきり見える驚きの透明度
深いぞ。。。
ドラゴンブルーと形容される洞内湖の色を写真で表現するのは難しい。そして文章にするのはもっと難しい。あの青さは照明の青さなのだろうか、なんであんなに透明なんだろうかなどと考えてしまう。やがて非日常的な光景が続く鍾乳洞を抜けると、そこには冷たい渓流と林が広がっていて、木漏れ日を眺めながらのんびりと昼食をとった。
緑あふれる美しい光景
もう一度、今度は龍泉洞よりも周囲の渓谷をハイキングしにきたいとおもった。さて、このとき既に14:00過ぎ。来た道をそのままなぞって小本駅にもどり、そこからはY家を目指してひたすら鉄道で南下する。車窓から時折見える太平洋を眺めながらも「あー、沖は結構波あるなぁ」「明日は釣りにいけるかなぁ」と考えてしまう。途中で電車は宮古や釜石という聞きなじみのある街を抜けていく。釜石駅前には新日鉄のどでかい建物が見えて、さながら新日鉄の城下町という雰囲気であった。
帰宅、その頃Yさんは、、、
18:00過ぎに吉浜の駅につき、Yさんに拾ってもらって帰る。僕が龍泉洞にいた頃Yさんは海に出ていたという。「実は今日の午後弟と釣りに行ったんだけど、1時間ちょっとで4枚釣った。」という話からして海の状況は悪くないらしい、明日は釣りに出られることはほぼ間違いないという話を聞いてほっとする。
家に帰って夕食。この日も見たこともない海の幸が食卓にならぶ。どんな魚も美味しく料理してくれるお母さんがいるからこそ、Y家の男は釣りに行けるんだろう。
左手前がお父さんが似た煮あわび。絶品でした。
明日の晴天だけを祈って20時過ぎに寝る。
ちなみにY家に戻ってきたときには鹿がお出迎えしてくれた。道路の真ん中で立ち尽くしている。
4日目 (9/22 火曜日)
4:30 起床。天気は、、、暗くて空模様は分からないが、お父さんによると問題ないらしい。車に乗って、いつもの港ではなく千祥丸という釣り船がとまっている浜へ向かう。
千祥丸に乗り込む
今日は乗り合いの船なので当然他のお客さんもいて、全部で10人ほどが乗り組む。弟さんが船上のいい場所をキープしてくれた。僕の隣にYさん。反対側の隣にお父さん。後ろ側に弟さん。つまり初心者を三方向から囲む、これまさにid:kkomiyamaシフト。
釣り開始、でも揺れすぎじゃない?
6:30 ポイントに移動し、釣り開始。まずは湾内の近い場所でつってみる。船の誰にもあたりがない。全体的に渋めの一日の始まりである。その後船は30分ほど走って、越喜来湾を出て、綾里崎*4が見えるあたりに移動した。移動前に「道中ちょっとゆれっからね」と船長は言ったが、言われる前から船はぐらんぐらん揺れていた。乗船後1時間で見事に人生初の船酔いを経験する。周りを見回すと、ベテラン釣り人はイカスナックを食べながらビールを飲んでいるし、Yさんはおにぎり食べている、お父さんに至っては、、、寝ている??*5
揺れの中で仕掛けを直すYさんとリラックスする弟さん
吐き気をこらえる私と背後で寝ているお父さん
経験の違い以上に、体のつくりの違いを感じつつ船は波をかき分け突き進んでいく。
釣れた!でもこれなんて魚?
吐き気に耐えつつ釣っていると、竿に「カツン、スーーー」っていう不思議な感触がある。おかしいなと思ってリールをちょっと巻いた瞬間に竿が一気にしなった。
「Yさん、もしかしてかかったかもしれ・・・」と伝えようとする前に「ゆっくり巻いて。ゆっくりね。」と3人に言われる。竿のしなりで魚がかかったことに全員が気づいてるのである!(ただし、竿を握っている僕を除く)
ゆっくりあげると、そこには地味な色の魚がいた。ヒラメじゃない。でもでかい!
「なんて魚ですか?」「アイナメ」
「食べられるんですか?」「美味しいよ!」
計ると42cmのアイナメでした。わかりにくい写真
「これ立派なアイナメだよ!」「釣った人がもっと盛り上がらないと!」と周りの釣り人にいわれる。が、アイナメという魚を知らないのと、標準的なサイズが分からないのと、船酔いで喜びを噛みしめる余裕がない。なにせこれが生涯初めて釣った魚なのだから。
今度こそヒラメ!
その後、釣り道楽Kさんからもらった船酔いの薬をカバンに忍ばせていたことを思い出して、あわてて飲んだ。1時間ほどたつと嘘のように船酔いが抜けてきた。薬というよりは精神力で乗り越えたと信じているが。
そして淡々と釣り糸を垂れていると、今度は竿にさっきとは違う鋭くブルブルくるあたり。「ガッ、ガッ」と手元に確かな感触が伝わってくる。
「Yさ、、、」
「まだ!まだそのまま」
えーと、、、今回も申告する前にみんなあたりに気づいてました。おそるべし釣り人たち。「ヒラメ40」の言葉の通り、ヒラメは餌に十分食いつかれるまでじっと耐えないといけない。最初の「ガッガッ」から20秒くらいしたところで、下で暴れてるような感触があったのでゆっくりと上げはじめる。逃げられたらという恐怖を抑えつつゆっくり上げきるとそこには確かにヒラメがいた。嬉しさのあまり「ヒラメだ!」と見たまんまを叫んだ気がするが定かではない。
今回の旅のベストショット「ヒラメとわたくし」
とにかくお目当ての三陸ヒラメが釣れたのである。サイズは35cmあった。
その後は周囲を見る精神的/体力的な余裕も生まれてきた。この日の海は決してよくなかったそうだ。ベテランのYさんとお父さんにほとんどあたりがなかった程である。そんな中釣れたのは本当に運がよかった。そして一口にヒラメ釣りといっても、しかけや竿の選択が人によって全然違うことも知った。近くのベテラン釣り人は極端に短く細い竿をつかい、竿をあやつりながら、イワシを泳がせヒラメを誘うのだと言っていた。実際彼は一日で7枚のヒラメを釣っていた。釣りの奥深さを入り口だけだが味わった気がする。
なんでも釣れれば嬉しい
しばらくして今度はサバが釣れた。狙っていない魚がかかるのを釣り人は「外道」と呼んで喜ばないそうだが、個人的にはいろいろな魚が釣れた方が楽しいので満足である。サバは船の下で暴れ、隣のYさんの糸と絡んであがってきた。釣った直後のサバの背中の模様が綺麗で、何枚も写真を撮った。
サバはビジュアル系。しかも足がはやい(=すぐ痛む)
12時頃 船は再び湾に戻り、湾内で少し釣った後ゲームオーバーとなった。荷物をまとめ、船長にお礼をいって陸に上がる。*6同じ船に10人が乗り合計25枚のヒラメがつれた。竿頭(船で一番釣った人)は7枚。千葉からの釣り人は結局なにも釣れずに帰った。それを考えるとヒラメ、サバ、アイナメという釣果は120%満足である。3人のコーチの指導と多少の運の賜である。
疲労困憊、昼寝、夕食
12:30 船を下りて、お父さん行きつけの中華料理屋で天津丼を食べて昼ご飯にする。船を下りて30分たっても、息があがっている。海の上での疲れ方は普通の運動とはちょっと違う。帰宅してからはシャワーを浴びてさっさと寝かせてもらった。その頃Yさん達は道具を洗ったり、お祭りした仕掛けをほぐしたりという後片付けをしていた。そして夕方待ちに待った釣った魚で晩餐である。
お父さんが酢締めしたサバ
アイナメのなめろう。量が尋常じゃない。
贅沢な話ではあるが、ヒラメの刺身については早くも食べ飽きた感が。それでも自分で釣ったというスパイスが加わってこれが一番美味しく感じる。なめろうはハンバーグになって再登場した。過去の人生で食べた中で一番美味しい魚ハンバーグだった。
あいなめハンバーグ
21:00頃、また寝る。しっかり昼寝をしたのに、今日はいくらでも寝られる気がする。
5日目 (9/23 水曜日)
朝、家族全員に見送ってもらって大船渡のバスターミナルに出かける。結局犬だけは一回も近寄ってきてくれなかった。大船渡の市街までお父さんの車で送ってもらい、そこから仙台まで所用3時間半の大して速くない高速バスに。高速バスに乗って仙台に着くと、その大都会ぶりに怯んだ。岩手の沿岸の街と比べものにならないほど、人が多くて、車が多くて、緑が少ない。なぜ仙台だけがここまで発展を遂げたのか地政学に明るい人に聞いてみたいところである。
新幹線に乗り、16:00には東京に帰り着いた。弟にお土産は?と聞かれるまでお土産を買い忘れたことにも気付かなかった。釣った魚は食べてしまったし、残ったものは写真と思い出だけであるが、いろいろなものを持ち帰った気分だったのである。
エピローグ
ひょんな事から決まった岩手行きとヒラメ釣りだが、5日という短い日程の中でずいぶんいろいろな経験をした気がしている。時間の濃密さがブログの文字量にも素直にあらわれているわけであるが。
ヒラメが鋭い歯と大きな口をもっていて、触るとぬるぬるしていることを知った。サバの美しさを知った。まったく穏やかに見える海が実際に船ででてみると激しくうねっていることを知った。船酔いのときは沿岸の岩など一点をみつめると治ることを覚えた。海から見るリアス式海岸のすばらしさは陸からは想像することすらできなかった。うん、一言にまとめるなら「海が前よりも好きになった」ということだと思う。
得難い経験をさせてくれたY家の人々に心の底から感謝しつつ、ささやかな冒険の報告を終わりたい。
おしまい
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*1:残りはスカイダイビングと、、、あと1つなんだったっけ???
*2:一回は練り餌をつかって近所の千曲川へ行ったがなにも釣れず。もう一回は父親の会社の友人にさそわれて冬の新潟の海へ行き、岸から釣りに挑戦した。なにもかからず、しかも行きの車で飛び出してきた猫をはねてしまうという、不運なおまけ付きだった。
*3:釣りにいくカバンには「姑獲鳥の夏」が入っていた。そのくらい暇だと思ってた。
*4:これでリョウリザキと読ませる
*5:後から聞いた話だが、この日の波はベテランの釣り人にも厳しいものであり、一見平気そうだったYさんも弟さんも吐き気をこらえていたそうだ。ただ初心者への心理的な影響を考えて、「今日揺れるね」などとはおくびにも出さなかったのだという。すっかり術中にはまった。
*6:これも後で知ったのだが、この日弟さんが船長に「彼はヒラメ釣りに東京から来たのに、まだ釣れてない」と告げたところ「そりゃ釣らせねばいがんな」といろいろ配慮をしてくれたそうだ。まったくもってありがたいことである。