「物の値段というのは、需要と供給のバランスによって決まる。」
その常識を打ち破ろうとする運動がある。フェアトレードというものである。
フェアトレードとは、貧困のない公正な社会をつくるための、対話と透明性、互いの敬意に基づいた貿易のパートナーシップです。フェアトレードは、アジアやアフリカ、中南米などの農村地域や都市のスラムなどに暮らす人々に仕事の機会を提供することで、貧しい人々が自らの力で暮らしを向上させることを支援しています。小規模農家や手工芸職人に継続的な仕事をつくり、農薬や化学肥料に頼らない自然農法や、生産地で採れる自然素材と伝統技術を活かした生産によって、持続可能な社会を目指しています。
日本でフェアトレードを行っている企業でもっとも有名なPeople Treeのサイトから引用。
世界フェアトレード・デー2007
今日「世界フェアトレード・デー2007」というイベントが丸ビルであった。イベントの公式ページにはフローラン・ダバディと坂本龍一がコメントを寄せている!
この二人のコメントはいつだって大変参考になる。「坂本龍一 大絶賛の映画」が面白かった試しはなく、「ダバディが衝撃を受けた写真集」にいたっては手に取る気もおきない。単体でもそれだけの霊験あらたかな両巨頭*1が、そろってお勧めする世界フェアトレード・デーである。
つまり僕は一分の期待もせず、むしろドナドナ気分で大手町に行った。
さて今回はもともとフェアトレードに関心をもっている人が集うお祭りで、「フェアトレードとは?」という門外漢の基本的な質問に答えてくれる場ではなかった。というわけで、参加者を観察したり、出店をひやかしたり。やっぱり参加者ほとんど女性。ヨガやってる率は7割以上、電車の中で英字新聞広げる率5割、既婚・彼氏いる率2割そんな感じ。これ以上書くと各方面に不快な思いをさせそうなのでこの辺で。
誘導のスタッフや売り子の人などからは色気というか艶というかが感じられなく、やはりナチュラルとセクシーさは両立しないと痛感した。ただしそんなイベントの主催で、People Treeのサフィアさんだけは1人煌びやかなオーラを放っている、運動自体がこの人のカリスマ性で持っているんじゃないかと余計な心配をしてみる。
↑サフィアさん(日本語上手)
プログラムの一部として行われたSakura*2のミニライブはよかったです。話しているときの柔らかいトーンと突き抜ける歌声のギャップが。
フェアトレードってどうよ?
で、家に帰ってから軽く調べてみたけど、当然ながらフェアトレード自体賛否両論あるようだ。
the economistの記事の和訳を掲載している山形さんのWebが非常に参考になる。
そこからフェアトレードに対する主要な批判を抜き出すと、以下の通りだ
- フェアトレードは、かえって生産過剰をひどくする、価格保証をするので転作を阻害する
- フェアトレードのラベルは小規模生産者による組合にしか与えられない
- フェアトレードは価格保証をするので品質改善インセンティブがない
- 貧乏な生産者にお金をまわす手段として非効率
一つずつ考えてみる。
フェアトレードは、かえって生産過剰をひどくする、価格保証をするので転作を阻害する。
コーヒー豆のような商品の値段が低いのは作りすぎのせいだから、本来であればそれは生産者に対する、別の作物をつくるようにというシグナルなのだ、という主張。自由貿易推進派の考えだろう。個人的には賛成。
フェアトレードの認定は小規模生産者による組合にしか与えられない
大多数の農民たちは大規模農園で働いているのに、それを助けることができないという主張。誰かが新しいことを始めようとする時に「○○が配慮されていない」という批判は野暮だろう。たとえ99人の農民の生活が変わらなくとも、1人に利益があるのであれば、何もしないよりはましである。というわけでこの批判は却下。
フェアトレードは価格保証をするので品質改善インセンティブがない。
その結果としてフェアトレード商品はイマイチという論理。実はPeople Treeのオーガニックコットンのスウェットや下着を2年くらい使っている。品質は悪くない。縫製も生地も丈夫でユニクロ製品を買うよりもよっぽどお得な買い物だと思っている。というわけで私的にはPeople Treeの製品の良さを認めているものの、価格保証してしまったら、品質改善意欲がなくなるのは世の常、人の常であることも事実。この指摘は真っ当だと感じる。
貧乏な生産者にお金をまわす手段として非効率
たとえば1000円のコーヒーを買うのをやめて、2000円のフェアトレードコーヒーを買ったとして、生産者に1000円が渡るとはとうてい思えない。それならば寄付したりする方が効率的なのではないか?という批判。ホワイトバンドという白いゴムが流行ったけど、あれなんかホワイトバンドの問題点というサイトにまとめられているように、お金の流れが不明瞭というか説明不足で、最終的には「あのゴムは白痴*3の証ですか?」というレベルにまで信頼が揺らいだ。
ホワイトバンドのからくりを知って、腹を立てた人がたくさんいる。フェアトレードに関わる人たちは自分たちが中間搾取していないという事を正しくアピールしないと痛くない腹を探られることになるはずだ。フェアトレード商品を扱っている企業が本当にフェアであることを保証する仕組みを作る責任はフェアトレード企業にある。
だいたい今の日本にはフェアトレード企業が数えるほどしかない。3年後、5年後フェアトレード企業同士の競争が始まったら、やはりそのしわ寄せは生産者に向かうのではないかとも思う。フェアトレードの正念場はこれからで、制度もまだまだ議論の余地があることは間違いない。
で、明日からどうするか?
明日から自分はフェアトレード商品とどう向き合っていくか?という点ですが、今のところこう考えています。
- 買い物の際に、そのコーヒー(商品)を買うことを我慢できないかをいつもより5秒多めに考える。
- 我慢できない場合、フェアトレード商品が選択できるのであれば、フェアトレードの物を買う
- その程度の選択で世界が良くなるとか胡散臭いことを考えない。人にフェアトレードを強要しない。
結局「余計な物を買わない」これが最強。
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*1:この2人にモデルのはなを加えると「俺の中の冬の大三角形」である。
*2:彼女のBlog 今回のイベントの記事あり: http://www.singer-sakura.com/blog
*3:すげーーー、Atok2007は白痴って変換候補を出さない!!!もう使わないほうがいい?