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Jul 1, 2013

宛先:久我 件名:魔法瓶と電子レンジさん


久我、元気でやってるか。

この前、久しぶりに近所のコンビニの前を通った。おじいちゃんの気分が味わいたいので、いつもの3分の1のスピードでしか歩けないという縛りを自分に課して、ものすごくゆっくりとコンビニの前を通った。そしたらな、東京ウォーカーの特集が目に飛び込んできた。表紙にはこうあった。

「取材拒否の雑誌に載らない店特集」

これはいかんだろ。誰かが「雑誌に載らない店特集」が雑誌にのることを疑問に思わないといけないだろう。横に並んでいる宇宙兄弟の漫画より、東京ウォーカーのほうがよほどサイエンス・フィクションだ。これを作った奴は宇宙人にちがいない。

久我、これが21世紀ってやつだ。世界は狂ってる。クルクルに狂ってる。そしてその狂気は何気ない形で俺たちの日常を蝕んでいるんだ。

例えば俺は昔から「魔法瓶」というやつがたいそう気に食わない。例えばだ、例えばの話、魔法瓶が以下の様なものであれば、、、

まほうびん【魔法瓶】

奈良時代から平安時代にかけて現在の中国を経てヨーロッパから日本にもたらされた瓶の一種。その起源はイエス・キリストが厩で誕生した際に、従者たちが沸かしたお湯を入れた瓶に遡る。イスタンブール国際博物館に収蔵されている現存する最古の魔法瓶の中の液体は1800年を経た現在も摂氏80度を保っている。(2010年、ハーバード大学研究チームの赤外線温度測定に拠る) 温度維持のメカニズムは未だ解明されていない点が多い。なお日本の市場で魔法瓶として流通しているのは形や色で元祖を踏襲するものが多いが、概ね1年ほどで内部の水が室温と同じ温度に戻る。

これなら魔法の瓶と俺も呼びたい。使っていない時は床の間に並べておきたいとさえ思う。だが実際はどうだ?確かに魔法瓶にいれたお湯は冷めにくい。半日くらいは熱々を保ってくれる。しかしだ、魔法とはそんなチンケなものなのか?誤差程度の保温機能だけで「魔法の瓶」とはさすがにないだろう。まぁマーケティングっていわれればそれまでだけどな。

久我、俺はここであえて電子レンジさんの凄さを強調しなければならないと思う。電子レンジさんのほうがよっぽどマジカルなエクイップメントだということを。あれはあれだよ、横から電波みたいなのがビーって出て食べ物の中の水分子を震わせて瞬時に熱を発するらしいな、よくわからないけど。これはかなり魔法じゃないか? それだけじゃない。俺はときどき電子レンジのガラス窓から冷凍ご飯が温まり、ホカホカにされていく様をただじっと見ている。毎回想うんだ「ガラス隔てて向こう側が自分だったら死んだな」と。「今日も命拾いした」と。電波がどういう角度で出ているのかは分からないが、あんな頼りない仕切りだけでこちら側になんの影響も及ぼさない電子レンジさんは、市民の巻き添えを許さない心優しい暗殺者のようだ。

こんな画期的な家電の名前が電子レンジって名前なのはかわいそうじゃないか? しかも愛称「チン」だぞ? 英語だとなんだ、マイクロウェーブか? 微かな波あるいはびみょーな波だよ。そういえばそんな宗教があったな。そりゃパナウェーブか。

まぁいい。

とにかく今身近にあるものの中で一番マジカルなのは断トツに電子レンジさんであり、それを差し置いて冷めにくい瓶ごときが魔法を名乗るのが俺は全くゆるせない。

久我、ここまで読んでもしかしたらお前はこういうのかもしれない。「大豆を腐らせた食べ物が納豆で、豆乳を容器に納めて固めたのが豆腐なのはおかしい、逆ではないか」と。・・・そ、そういうのは屁理屈という。。。それはもう社会のルールだ。 もっと大人になれ。

じゃあ俺は寝る。

小宮山@白いご飯は1分20秒