そろそろ笑ってくれる気になりましたか?
もう一度聞きますよ。ウイスキーはオスキーでしょうか?
本記事はウイスキーワールドカップ(予選リーグ編)からの続きです。
ウイスキーワールドカップ(以下ウ杯)は5人の審判があやふやな直感をもとに美味しいウイスキーを決める大会。29選手が8つの決勝トーナメントのイスをつかんだ。その顔ぶれは以下のとおり。(エントリー番号、銘柄名、実売価格の順です。)
A2 サントリー響17年 7765
B3 ザ・マッカラン 12年 3730
C3 ジェイムソン スタンダード 2020
D3 サントリー 白州 12年 6580
E2 ニッカウイスキー ザ ブレンド 45% 3070
F2 ヘネシーVSOP 8990
G3 サントリー ローヤル 2880
H3 ニッカウィスキーゴールド&ゴールド 1750
決勝トーナメントを前に |
決勝トーナメント
それでは第一試合からみていきたい。決勝トーナメントからは5人の審判が全員評価に加わった。まぐれで勝ち上がることはできない厳しい世界である。
後ろに写っているのが今回自分は一滴ものまずにお酒の用意と記録をしてくれたマネージャー。ブラインドで飲むことができたのはマネージャーのおかげ。 |
準々決勝4試合
決勝トーナメント、ここに勝ち残る選手はどれも美味だった。予選リーグとは違って勝ち負けが分かり難い中、審判達が五感をフル活用した結果が以下のとおり。
なお繰り返しになるがテイスティングはブラインドで行っているため審判は自分が飲んでいる酒がなんであるか決勝が終了するまで知らされていない。
A2 サントリー響17年 7765 対 対 ザ・マッカラン 12年 3730
結果:4対1で響17年選手の勝利
マッカラン選手は決勝トーナメント進出したなかでは「個性的」「焼き菓子っぽい」との評価。一方で響17年選手は「国産っぽいマイルドさ」という高評価を万遍なくうけ、4対1という結果で貫禄の違いをみせつけた。
C3 ジェイムソン スタンダード 2020 対 D3 サントリー 白州 12年 6580
結果:3対2で白州12年選手の勝利
ジェイムソン選手は「味ならこちら」「のみやすい」「高いお酒の味」などという漠然とした評価、白州12年選手は「水っぽい」「バーボンのような味がする」「後味がしょっぱい」などと総じてネガティブなコメント。
白州12年選手が辛くも勝利をおさめた。
E2 ニッカウイスキー ザ ブレンド 45% 3070 対 F2 ヘネシーVSOP 8990
結果:3対2でニッカザブレンド選手の勝利何故かウイスキーワールドカップに参加し、ここまで勝ち残ったヘネシー選手。その味は「ブランデーのよう」「異質」と審判に見抜かれていました。しかし「甘い」「うまい」と審判2人がこれを推しており、ウイスキー好きに対するブランデーの強さを感じる。
対するザブレンド選手は「国産なんだけどアイラ系?」「海の匂いがする」「すっぱい、きつい」とど真ん中ウイスキー感が評価されました。お酒の質というよりは審判の好みが全てであったのかもしれません。
H3 ニッカウィスキーゴールド&ゴールド 1750 対 G3 サントリー ローヤル 2880
結果:4対1でG&G選手の勝利
ローヤル選手は「香りがいい」「舌の上で転がる宝石」「ちょっと辛い」「油っぽい」などの評価をうけた。対してG&Gは「甘い」「カラメル的甘さ」「煙たい」などと評された。結果は大差でG&G選手の勝利。
積上る使用済みテイスティングカップ、用意した150個使い切りました。 |
ベスト8に勝ち上がったのは全て国産、そして3つがブレンドウイスキーという結果からは、個性の強い銘柄がまずいということではなく、単純に多数決に弱いということと考えらる。そんな誰にも愛される、愛されウイスキー4銘柄がいよいよ2つに絞られる。
A2 サントリー響17年 7765 対 E2 ニッカウイスキー ザ ブレンド 45% 3070
結果:4対1で響17年選手の勝利
響17年選手は「匂いは甘くて優しいのに味はガツンと来る」という評価を得た。ブレンドニッカは「かすかな酸味がある」というコメント。しかし両者とも「うまい」というのが5人の審判に共通の意見。
D3 サントリー 白州 12年 6580 対 H3 ニッカウィスキーゴールド&ゴールド 1750
結果:3対2で白州12年選手の勝ち
結果が割れたことからも僅差の勝負であったことがうかがえる。まず勝利した白州12年選手ですが「香りが好きじゃない」「アルコールそのものの味がする」「複雑でよくわからない」とすでに選手の動きに審判がついていけていない感じのコメントが並んだ。G&G選手は「香りが薄い」というコメントが並びました。これは決勝で初めて指摘されたことなので、予選はともかくトップクラスとの戦うことではじめて限界がみえてくるのかもしれない。
いよいよ佳境へ |
決勝
A2 サントリー響17年 7765 対 D3 サントリー 白州 12年 6580
結果:3対2で白州12年選手の勝ち。
お酒の量の都合上、ずっと水と1:1で割ってきまたが、決勝に関してはストレートで試合を行った。謀らずもサントリー対決となった決勝戦。
優勝候補筆頭であり、ここまで危なげない勝ち上がりをしてきたオールラウンダーの響17年選手だったが、白州12年選手が強烈な個性でねじ伏せた。
白州12年選手は非常に複雑な香りと味でした。審判の評価も「リンゴの香り」「強い胡椒」「有機溶剤」「木工ボンド」「口の中にのこる」などととても1つのお酒を飲んでいるとは思えないばらつきであった。
対する響17年選手は、「香りが甘い」「いい甘さと切れ」「スパイシーな蜂蜜」「ブランデーっぽさ」とある程度感想にもまとまりがある。ストレートにしたところ今まで聞かれなかった「しょっぱい」という感想が複数の審判からでたのはおどろき。
あらためて飲み方の違いで大分味と香りがかわるということが分かる。
戦いおえて、、、 |
まとめ
1. ウイスキーワールドカップの栄えある勝者は「白州12年」うまいぞ!
29銘柄の中、栄えある1位に輝いたのはサントリーの白州12年選手であった。5人の審判の多くが白州選手を飲んだことがなかったが、「香りでおびきよせておいて、全然違う味でおどろかせる」「ワイルドバットフォーマル、千代の富士(現九重親方)のよう」という評からも非常にインパクトのある味であることがわかる。私は千代の富士を味わったことがないのでその表現が的確か判断できる立場にないが、老若男女問わずに指示されたのはまぎれも無い事実である。是非一本買っていろいろな飲み方を楽しんでみたい。
そして弱点の無いバランス型のウイスキーが多く勝ち上がるウ杯を、シングルモルトが制したというのはなにか心地よい気がする。
2. 高い酒は美味しい。安くて美味いウイスキーはG&Gとニッカ ザ・ブレンドの2つ
身も蓋もないが、高い酒はやはりうまいということは決勝トーナメント進出選手の価格が平均4600円と全選手平均価格の3227円を大きく上回ったことからもいえる。当初我々審判は安いウイスキーと高いウイスキーに大きな違いがあるとは思っていなかった。しかし高いウイスキーは香り高く、長持ちし、味わい深い。比較するとそれは明らかである。
しかしそんな中でも、比較的安いにもかかわらず審判をうならす美味いウイスキーがあった。コストパフォーマンスに優れているのはニッカ G&G選手(1750円)とジェイムソンスタンダード(2020円)とニッカ ザブレンド選手(3070円)である。特にG&Gについては「シンプルにうまい」「好きな味」と評判が良かった。(比較的)手が出しやすい価格なのでウイスキーを何か試してみようと思われたらこの3銘柄をお勧めしたい。
逆に今回のウ杯の結果からおすすめできないのはサントリーの看板である山崎10年選手と山崎12年選手。「奥から安物感」というコメントは信じられないと、多くの審判が競技終了後に試飲したがイマイチ感は拭えなかった。またニッカのメジャーな銘柄竹鶴12年選手もふるわなかった。
3. 響17年選手は万人に受け入れられる味
トーナメントにすると国産のブレンドウイスキーが強い。中でも響17年選手の安定感は際立っていた。その真骨頂は準決勝の対ニッカザブレンド選である。この試合、審判5人は両者に決定的な味の違いを見出せずに迷っていた。どちらも美味しいのである
そんななか決断を迫られると「(明確な理由はないけど)うーん、こっちかな。。。」といって響17年選手に4人の表が集まった。響17年は素人には分からないなにかをもってる。
4. 好みは人それぞれで、ウイスキーはそれぞれに美味しい
決勝トーナメントの全ての試合で5対0という結果は無く、支持が割れたのは特筆に値する。これはつまりある程度のレベルからは好みの問題であるということと思われる。私自身はマッカラン12年選手が一番好きだし、今後も飲み続けると思う。アレが美味いだの、白州が王者だの言っておいてなんだが、ウ杯の王者と自分が一番好きなウイスキーは違っていいはずだ。
なお我々審判団は次回のウ杯に向けて既に始動している。生きのいい選手の売り込み、及び審判団に加わって色々なウイスキーを飲んでみたいというご意見は大歓迎である。
おまけ:ウイスキーワールドカップ写真館
審判Cが撮った写真がとてもよいので貼っとく。
ワールドカップ会場案内。世紀のイベントをご近所の酒好きの集まりのように書かれてしまった。 |
小魚とナッツのお菓子は魚の後味が残って、ワールドカップ向きでないことが後から判明した。 |
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第一回王者「サントリー 白州12年」 おめでとう!!! |