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Dec 18, 2011

コミヤマさんたちの物語

僕の名前はコミヤマ。長年komiyama@という分かりやすいメールをつかっている。昔からこのアドレスには、僕以外のコミヤマさん宛の色々なメールが届く。
今日はその間違いメールに若干の想像を加えて、僕はまったくしらない、決して交錯することはないであろうコミヤマさんたちの物語を紹介したい。

 

2007/6 奈良に住むコミヤマさんには「オーロラを見る」という幼い頃からの夢があった。通りがかった旅行会社のHISでオーロラーを見に行くツアーをみたコミヤマさんはこれに参加することにした。目指すは冬のフォートマクマレー。

2007/12 アルゼンチンの日系企業で働くコミヤマさんは、東京からやってくる重役達のためにパーティーの準備をすすめていた。コミヤマさんは用意周到である。

2008/2 「誰でも家に居ながらにして月収50万から70万確実!」という広告にめざとく気づいたコミヤマさんは運営者にメールしてみることにした。サービスはいつから始まる?確実な収入か?現金又は銀行振り込みか? コミヤマさんは慎重なのかアホなのかよくわからないひとである。

2008/7 コミヤマさんは夏休みということで実家に帰省することにした。実家の最寄り駅から実家までは歩ける距離ではない。「お父さんへ 明日帰ります。ピックアップお願いします。」

2008/8 東京で働くコミヤマさんは富山にある取引先から強烈なクレームの電話をうけた。どうやら先日納品した商品に欠陥があったらしい。取引先の怒りは収まらず、上司に相談すると早速翌日富山に飛ぶことを命じられた。 富山行きの航空券を予約する。「帰りの便はいつにしますか?」というアシスタントからの質問に「先方の怒りが収まったらだね」と答えつつコミヤマさんは片道の航空券を握りしめ富山へ飛び立った。

2009/7 山梨の山間にある中学校で教頭をしているコミヤマさんは非常勤講師として地元の人を学校に迎え、人形劇などの郷土芸能、地元植物の栽培を今の中学生に教えることを考えていた。 コミヤマさんはまた学校事務の効率化について悩んでいた。教育ソリューションフェア2009という東京でのセミナーに参加してみることにした。

2009/12 編集者のコミヤマさんはイラストレーターさんから次の雑誌で使うカットの案を受け取る。うーーん。「やわらかな光」っていう大ざっぱな発注がよくなかったのかなぁ?できばえはコミヤマさんにとって微妙なものだった。

2009/12 長野県の地方都市に住むコミヤマさんは久しぶりにamazonで買い物をしたかったのだが、どうにもパスワードが思い出せない。パスワードの再設定をすることにした。コミヤマさんはうっかりさんである。

2010/3 音楽プロデューサーのコミヤマさんは仙台のセミプロバンドのサウンドアレンジの仕事をうけることにした。デモ音源は良くも悪くも荒削り。アレンジャーとしてのコミヤマさんの腕前がとわれる。

2010/5 店の内装などを手がけるコミヤマさんにとって、美容室の仕事は神経を使うものの1つである。美しさを売る場所である美容室は、当然その店構えにも妥協はゆるされない。くわえてこのところの不景気である。コミヤマさんは「安く早く、しかしどこにも無い店を」という無理難題を押し付けられた。 この日はその店に大型の機材がはいり、ほぼコミヤマさんが描いたイメージ通りの空間ができあがってきた。満足満足! 店内の写真を携帯で送り、自宅に送ったコミヤマさんは久しぶりに飲みにいくことにした。

2010/7 総務部で働くコミヤマさんは上司のソウル出張の航空券を手配する。航空券予約はお手の物のはずだったが、今日は上司に呼び出されてしまった。なんだろう? 「行きの便は木曜ではなく金曜にしてくれたまえ。韓国では一泊でいい。時は金なりだよ、わかるかねコミヤマ君?」 早速日程を変更して、ひとまずセーーーフ。コミヤマさんは胸をなでおろした。

2010/10 東海地方の建設会社で働くコミヤマさんは翌日の工事で使うボイドスラブ図(もちろん配管図も含め)を自分の自宅にメールした。家で印刷して明日は現場に直行しよう。コミヤマさんは働き者である。

2010/11 コミヤマさんは思い立って12月最初の週末を北海道で過ごすことにした。往復26,600円で航空券を購入した。スカイマークはやはり安い。さあ次はホテルを予約しなくっちゃ。

2010/12 デザイン関連の仕事をするコミヤマさんは商用のフォントを試用してみることにした。今度のパッケージデザインの仕事に使えるといいな。

2011/1 アメリカで灯台を販売し設置する会社のコミヤマさんは、翌日の取引先との新年会に部下が参加出来ないというメールをうける。まったくあいつめ。いつもなにかにつけて酒の席を断りおって。コミヤマさんはちょっとさみしかった。

2011/1 アメリカの大学教授であるコミヤマさんは取引先から新しい研究に必要な機材をどのように手配するかについて提案をうける。コミヤマさんは頭をフル回転させる。

2011/1 東海地方で医療関連の仕事をするコミヤマさんは26日水曜に食事会と称し医師を接待することにした。

2011/1 コミヤマさんは使っているNICOSカードの明細が毎月郵送されるのを煩わしいと思っていた。この日WebからNet Branchというサービスを使って利用明細をネットで確認できるように設定を変更した。コミヤマさんはITを活用している。

2011/3 震災直後、友達の安否が気になったコミヤマさんは知り合い達にメールしてみる。今は海外に住む友達が返信してきた。「うちの勉強用の机と弟の机の物が全部落ちたんだってwwwww」笑っていいのかコミヤマさんは戸惑った。

2011/3 アルゼンチンに住むコミヤマさんは前の日バーで知り合った女の子からの写真付きメールを受け取る。しかし会社のシステムで写真が削除されてしまったらしい。あれ、夕べちょっと羽目を外しすぎたかなあ?コミヤマさんは心配になった。

2011/3 コミヤマさんは取引先のケミカルメーカーから新しい薬剤の生物評価の結果を受け取る。新しい製品はヒエにもホタルイにも効くことがわかりコミヤマさんは胸をなでおろした。

2011/8 コミヤマさんは今ちまたで流行っているらしいSkypeのアカウントを作ってみた。自分のあだなからクマキチというアカウント名にしてみた。

2011/12 コミヤマさんは間違いメールがあまりに多いので、まとめてみた。コミヤマさんたちは、今日もこの星のどこかでコミヤマさんの人生を行きている。そのことが明日のコミヤマさんをそっと励ましてくれている。

end

[caption id="attachment_2560" align="aligncenter" width="600" caption="パラレルワールドでは「嵐のメンバー」とかがいいと願うコミヤマさんであった。"][/caption]

Dec 15, 2011

11月の光景

生まれて初めて世界一周した11月をふりかえってみます。

まずは10月に書いた「神保町ランチ戦記」が呼び水となり、会社の同僚ともう一度近辺のランチをきちんと調べてみよう、新規開拓しようという機運がにわかにもりあがった。というかもりあげた。雑誌を参考にして、細い路地を歩いていったり、こんなとこにお店あったっけ?という店に入ってみたりした。なんかエンゲル係数が急に上がった気もするけど、人生には適度な刺激が必要だと思う。

Rodrigo Y GabrielaのCDを買った。特にLive in Franceがいい。アコースティックなギターでもこんなに盛り上がれるんだなと。



 

11/2
家の近所でゆったり飲めるバーを探そうということで、週末にいろいろなバー・飲み屋で一杯づつのんではしごする夜遊びをした。楽しかった。バーは大抵ダンディーなバーテンがいて、いろいろ教えてくれて、一人の時は話しかけてくれる。思っていたよりもずっと敷居が低かった。

11/14
自宅でチキンライス。外ではよく食べるけれど家で作ろうなんて考えたこともなかった。

[caption id="attachment_2540" align="aligncenter" width="600" caption="ショウガとニンニクのたれも抜群にうまかった。"][/caption]

11/16
出張。まずはミュンヘンで一泊した。空港で食べた白ソーセージとビールの朝ご飯はすばらしかった。これでしばらくまともな食事とはおわかれという予感を抱きつつソーセージかみしめる。

[caption id="attachment_2541" align="aligncenter" width="400" caption="スイスかロシアの上空"][/caption]

11/18
カメルーンでの仕事がはじまる。アフリカに情報セキュリティ対策をする組織をつくろうという壮大な計画で、アフリカ出張は今回が3回目だ。マラリア予防も水道から出る茶色水にも埃っぽい街にもなれてきた。今回は比較的楽になるはずだった。ところがどっこい、やはり今回も大変だった。カメルーンは英語とフランス語が公用語と聞いていたが、街でもカンファレンスでもあう人はみなフランス語しか話せない。

理解しがたいことも沢山おきた。人に何かを依頼する時の態度が高圧的な人が多く、やはり僕の感覚では理解しがたい。言葉がきつく、周囲へのあたりが強く、自分にあまい。タフな仕事場である。

[caption id="attachment_2553" align="aligncenter" width="600" caption="Afrinic15"][/caption]

 

[caption id="attachment_2555" align="aligncenter" width="600" caption="仕事一段落の後にみんなで地元の魚料理。開放感とあいまってうまかった。うしろの緑の人の視線がこのくにで黄色い人がどれだけ珍しいかを物語っています。"][/caption]

[caption id="attachment_2542" align="aligncenter" width="400" caption="そして道のりはまだまだ長い"][/caption]

アフリカでの仕事のパートナーはいつもYさんというバイタリティ溢れる人だが、今回は珍しく体が重そうだ。

11/26
ブリュッセルへ。中央アフリカから日本にかえるにも欧米に行くにもベルギーは便がいい。中央アフリカのいくつかの地域をベルギー王室が統治していたという歴史的な経緯からブリュッセル航空がアフリカに多くの直行便を飛ばしているからだ。そんなわけでブリュッセルで乗り換えついでに一泊した。

[caption id="attachment_2546" align="aligncenter" width="600" caption="ブリュッセルは全てが輝いていた。"][/caption]

道をあるくと凝りにこったチョコレートやお菓子が店先を飾っているのが見ていて楽しい。カメルーンの森でみたカカオがベルギーの街角で美しいチョコレートになっている。その光景をみると、ベルギーへと僕がたどったのは、シルクロードならぬカカオロードだったのかもなと思う。

[caption id="attachment_2547" align="aligncenter" width="600" caption="これがカカオ。堅い殻に覆われた白い実はほのかに甘い。"][/caption]

 

11/28
アメリカへ移動。人生初めて大西洋をわたった。マイレージがたまって来年もスターアライアンスのゴールドの資格ゲット。これがあるとほとんどの空港でラウンジが使えて、ラウンジにはもれなくインターネット接続があるのがうれしい。

11/29
上司と打ち合わせ。レストランと喫茶店をはしごしたミーティングは長時間にわたったが、いろいろなギャップを埋めることができてひとまずよかった。

11/30
ホテルの設備が貧弱なのだろう、アメリカなのにインターネット接続がカメルーンよりも遅い。仕事ができるレベルではないので、街へ早いインターネットを探しに。こっちのスターバックスはほぼ全て無料Wifiを提供しているので、スタバに5時間居座る。
デパートでTUMIのバッグを購入した。できるビジネスマン風でかっこいいのだがめちゃくちゃ重い。ただこのカバンをきちんと使いこなせれば、バッグの中で何かが無くなったりする悲劇はおこらなくなるのではないかと期待している。

[caption id="attachment_2549" align="aligncenter" width="448" caption="厚い とにかくぶ厚い"][/caption]

12/1
ミーティング。朝から夕方まで25分きざみで講演者が次々と現れる。昼ご飯も話を聞きながらサンドイッチを食べる。その合理性はやっぱりアメリカだからこそだろう。書かれたスケジュール通りに議事が進んでいくのはきもちいい。最近こういうのなかったからなぁ。そして日本から参加した人たちが皆さん話が巧みで、内容が濃くて圧倒された。あらためて日本にもスゴい人たちがたくさんいるものである。

ディナーは同じ会議に参加する5人でメキシコ料理へ。以前、サンフランシスコのペルー料理屋「La Mar」で食べたセビーチェ(ペルー風の刺身で生の魚をライム等であえる)がとても美味しかった。そこで今回もセビーチェを食べさせてくれるレストランへみんなでいってみた。セビーチェは前ほどの感動はなかったがおいしかった。海外では生魚もすっぱいものもなかなか食べられないから、3週間近い出張でそういうものに飢えていたのだ。セビーチェ以外の料理もおいしくて、大満足のディナー。

[caption id="attachment_2548" align="aligncenter" width="600" caption="夢にまで見た生魚(セビーチェ)"][/caption]

 

12/3
さぁ帰国するぞ。早朝、タクシーに乗って空港に向かった。「アフリカ周りの世界一周の出張が今日でおわりで、やっと家に帰れるんだ」という話をすると、タクシーの運転手はなんとアフリカ(エチオピア)出身だという。聞けばこの地域だけで40万人ものエチオピア人がいるという。たしかに空港にはエチオピア航空がアジスアベベへの直行便を出していて。この街とエチオピアの深い深い関係に驚いた。

あまり関係ないことであるが、海外に出張していて最も「俺頑張っている」と感じるのは、朝暗いうちからスーツケースに荷物を詰め込み、移動の準備をしているその瞬間である。プロフェッショナル仕事の流儀や情熱大陸のテーマ曲を流しながら荷物を詰めれば、さらに盛り上がる。
見通しの悪い環境で仕事をする上で大切なのは、自分の中でストーリーをつくり、勝手に盛り上がり、メリハリをつけることだと思う。勝手につくった自分の物語の中で僕はとってもヒーローである。周りにその物語を押し付けなければ、それでいいと思うんだ。
サインは「V」