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Sep 20, 2011

魂の制限速度

きっかけは男4人テキーラ片手のとめどない酔談である。

後輩が唐突にこんな話をはじめる。
「インディアンは長距離を馬で移動した後は、必ず休憩しなければならない。1日馬に乗ったら、1日その場にとどまるという風に。そうしなければ、体の移動に魂の移動がついてこれず大変なことになってしまう」
インディアンが本当にこの言い伝えを守っているかはさておき、大変なことになってしまうという肝心な部分の表現のあいまいさはさておき、僕はなんとなくこの話に合点がいったのだ。

移動が多い毎日をしていると魂がついてきていないと感じることが時々ある。
東京からアメリカの西海岸に飛ぶと、時差のせいで夕方には激しい眠気におそわれる。そこで寝てしまうと現地の時間に体が慣れないために散歩をして無理矢理起きているようにする。ホテルから2ブロックはなれたコーヒー屋で往来を眺めてぼーっとする。エスプレッソをすすりつつ「あぁ日本は今頃朝か、、、」と思うあの感覚。あれは単なる寝不足などではなく、魂が体に追いついてくるのを待つけだるさなのではなかろうか。

話は戻る。もとがオタク気質な4人があつまる会であるがゆえに、
「2日移動して2日休まなきゃ行けないなら、半分のスピードでゆっくりいけばいいんじゃないか。」「馬のすすむスピードがたとえば時速20kmだとしたら、その半分の時速10kmでゆっくりすすめば4日連続でうごけるんじゃないか。」「まてよ、それはつまり魂の制限速度は10kmそこそこということではないか」
などと話は思わぬ方向に発展した。その間にも何年と熟成を重ねて作られたビンテージのテキーラが音もなくあけられていったことは強調しないといけないだろう。


さておき。

今月尊敬する人が体調をくずして休みに入った。その人はテレビ番組は録画しておいて二倍速再生でみることで時間を短縮するというインディアンもびっくりの芸当をし、朝はやくから夜遅くまで働き続け、インプットもアウトプットもおおい人だった。今頃魂がおくれを取り戻しているところなんだろう。

さておき。

今月生まれてはじめてはげた。10円ハゲよりも小さなハゲができていた。魂がおいついてまたフサフサと毛がはえてくるんだろう。

つまり。

無理することは楽しい。「絶対無理」を「なんとかできた」にかえることには最上級のカタルシスが伴う。しかし僕らは魂に制限速度があるという事実をわきまえて生きていくべきなのだ。


たまには昼から公園でビールでひとやすみ