来週は久しぶりに旅行で台湾に行く。予習として、数週間前から台湾の政治、風俗や歴史に関する本をいくつか読んでいるのだけれど、ちょっと考えてしまったことをメモしておく。
写真は最近買ったキッチンタイマー二個。本文との関係はありません。
日本領台湾という歴史
1894年、日本は日清戦争に勝利し、下関条約で台湾の割譲を約束させた。台湾の人々にしてみれば、そもそも清国への帰属意識も薄い中、戦利品として日本に組み入れられることに激しい抵抗感情がひろがった。1895年6月、日本軍は台湾に進出した。小さな島を支配下に納めるまでに約4ヶ月を要したことからも、台湾人の抵抗がいかに激しかったのかがうかがえる。
しかし一部の台湾人は日本の進出を歓迎し、積極的に案内役を務めた。その代表格が当時全く無名であった辜顕栄という人物である。辜顕栄は日本軍を台北城に招き入れ、その後日本とのパイプを武器に一躍台湾の名家の仲間入りを果たした。今でも辜家は台湾有数の資産家である。(辜顕栄の二人の息子はそれぞれに台湾財界の要職を占めた。野村総研の人気エコノミストであるリチャード・クーはこの華麗なる一族の三代目にあたる。)
これについて台湾大学の歴史学者 周婉窈が『図説 台湾の歴史』の中でこう書いているのが印象的だった。
一個の民族が存続を求めるならば、必ずその強靭な独立自主の意思が不可欠である。世界の多くの国家が、外的に抵抗した人々を今でも民族英雄としてたたえているのに対して、進んで敵に協力した人々を唾棄するのはそのためである。さもなくば、国家が存亡の危機に直面した時、ひたすら投降するしか道は無くなってしまう。権勢におもねることを蔑み、気概と節義を尊ぶこと、これは民族の偉大さ、その風紀の貴賎に関わるものである。何人たりとも、台湾が外敵の侵攻を受けた時に、人々が我先に開城して歓迎する状況を見たくはないであろう。台湾社会の気風の凋落は、たやすく過去を忘れ、道に外れたやり方で富貴を得た人たちをうらやましがる傾向と関係しているのではないだろうか。
金銭的な成功よりも民族の誇りを尊ぶ考え方である。周婉窈はもともと台湾独立に積極的な学者なので、どうしてもこういうロマンチックな書きぶりになるのだろう。
台湾の今
今でも台湾では定期的に国民の意識調査が行われている。完全な独立を目指すのか?はたまた中華人民共和国と合流するか?についてである。反中vs.親中の台湾 (光文社新書)に詳しいのだが、意外なことに当事者である台湾人自身が「帰属問題について白黒つけずに、現状を維持しよう」という意思が年々強まっているのだという。経済的な発展は中国との密接な協力関係があってはじめて可能になるためである。
民族の自立よりも実利をとるという台湾人のリアリティーを意識調査から感じる。
一方で僕の身近な長いこと日本で暮らしている台湾人は実利より民族自立が大切なようだ。彼は帰化申請が許可される条件を満たしていると思うのだが、台湾人であることは大切なアイデンティティーであり、帰化する気はないといっていた。彼の場合、世界各国を訪れる際に台湾パスポートのおかげで、筆舌しがたい苦労をしているにも関わらずである。
ありきたりだが、台湾人もいろいろだなぁと思うわけである。
本当の台湾を見るのが今から楽しみだ。もちろん夜市を食べ歩くのも、お茶も楽しみである。