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Apr 19, 2014

親ばかと愛国心のあいだ

赤ちゃんはかわいいものだ。自分の子どもとなればなおさらだろう。我が子を世界一かわいいと思う親心は誰に咎められるものでもない。「うちの子は日本一、いや世界一かわいい」と言ってはばらない親がたくさんいる。
もし、同じく子を持つ親であるあなたが、我が子を世界一かわいいと思っているあなたが、目の前で別の人の自慢を聞かされたら、どう応じるだろう?

「いや、うちの子が世界一かわいい。したがって君のところは世界二位にかわいいね。おめでとう。」とは言わないはずだ。わが子かわいい自慢の場に順位付けは不要だ。うちの子が世界一かわいいというあなたとあなたの友達の思いは等価に正しいからである。

今、盛り上がるナショナリズムや愛国心というのはこの親ばかとよく似ている。

匿名掲示板などでは外国の人・政府・文化に対する否定的な書き込みが多い。サッカーチームの心ないサポーターがスタジアムの一角に「日本人限定」と掲示した。天皇はEmperorなのでKingやQueenよりも格上であり、日本の天皇が訪英したら英女王は上座をゆずらないといけないなんて主張する人もいる。雑誌は隣国の脅威を面白おかしくかきたて、敵愾心をあおる特集がならぶ。「だってそのほうが売れる」そうだ。
その後ろには日本は世界一いい国に違いないという思いがある。その後ろには反対側の出口でどう受け止められるかについて想像力が欠如している。

愛国心をもつことよいことだ。少なくとも地球の反対側にある遠い遠いどこかの国よりも、よく知っている自分の育った国に愛着を感じるのは自然だとおもう。今の我々があるのは多少なりとも日本という国のおかげだ。
愛国心をもつことはよいことだ。それは見ず知らずの子供より、自分の子供のほうが可愛いと感じるのと似た感情である。
愛国心をもつことはよいことだ。だからといって他の国と比較したり、不当に貶めるのは間違っている。

われわれは他国のひとが、自らを世界一いい国だと思うことを否定することはできない。
なぜなら世界一いい国の基準はたくさんあって、そして曖昧で、誰も順位をつけることはできない。

だから外国の人が「私の国は世界一いい国です。」と言ったら、「そうですね、日本も世界で一番いい国です。」と受ければいい。簡単なことだ、うちの子かわいい自慢を聞く態度で臨めばいい。



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