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Jun 11, 2010

僕らのアウトドアライフ (その2)

高校の時の部活、アウトドアライフ班(通称ODL)の話の続きです。後輩のニッシーから貴重な写真の提供があり、一部を使ってます。懐かしいぜ。

*ODLの実態
OutDoorLifeの名が示す通り、ODLのメインの活動はキャンプだったと思う。班室にはODL班備品の6人用ドームテント(割と性能よい)、コールマンのランタン、コッヘルセットなど一通りのキャンプ道具がそろっていた。春から秋は天気を見つつ、月に一度くらいキャンプにでかけた。いやもっと少なかったかもしれない。

[caption id="attachment_2166" align="alignnone" width="540" caption="河原で"][/caption]

近辺の山に荷物を運び上げ、焼きそばを作り、マシュマロを焼いた。夜遅くまで酒を飲み、火を囲んで語った。先生の悪口から将来の夢、先輩の失恋まで話題は尽きなかった。

ど田舎の町からさらに1時間ほど登った山頂なので夜には星座を探すの難しいほど大小の星が空を埋め尽くす。そんな空の下で、前島先輩が自分を彦星に例えて、織姫がどうこうと真顔で語っていた。笑いをこらえるのに必死だった。狸が現れ、蛾がランタンに特攻をしかけ、鹿は電信柱の陰から様子をうかがうストーカーの様にじとっと我々を観察していた。

そしてどんな時でも朝が来る。真夏でも明け方の森の中は静かで、空気が芯から冷えきっている。朝霧の中、重い体を鞭打って、前の夜の乱痴気騒ぎの後片付けをする。『宴の後」という言葉の持つ意味を噛み締めつつゴミ拾いをした。
ボーイスカウトではとうてい許されない、だらけたキャンプだった。誰も口にはしないが、椎名誠の「わしらは怪しい探険隊 (角川文庫)シリーズ」の東ケト会の破天荒さに影響を受けていたと今になれば思う。



*頑張らない、ゆとり教育の先駆けODL
ODLは本来、キャンプの仕方などを身につける事ができるという触れ込みであった。だが、僕はもともとボーイスカウトで小学校からキャンプにあけくれていた。おかげで中学生の時には既に、8人用のテントを1人で張るとか、木を組み合わせて竃をつくるとか、あたりまえのようにできたのである。安藤にしてもキャンプでは相当にベテランだった。僕らに新しく身につけるものはなかった。
やがて僕らが2年生になり活動の内容を決めるようになるが、いたずらに高度なキャンプを目指すようなことはしなかった。安全かつ簡単に登れる山を難しいシーズン、難しいルートを選んで登るのが登山家であるのなら、米を炊くのが面倒な時には「サトウのご飯」を持ち込むのがODLであるという暗黙の了解があった気がする。いや、なかったかもしれない。

その後、セクシーというニックネームの、全然セクシーじゃない男がODLに加わった。渡来僧が日本に仏教をもたらしたように、セクシーはODLに麻雀をもたらした。僕らは麻雀をした。ニッシーという後輩が入った。安藤に輪をかけて寡黙な後輩だった。放っといても自分ですくすく育つ子だった。まきさんという心優しい男とその弟のまさきが加わった。まきさんはランドナーという長距離を走るための自転車を持っていて、刺激を受けた僕らは一泊二日のロングライドにでたりした。

*喫茶ポプラでインダルジ!

[caption id="attachment_2165" align="alignnone" width="450" caption="懐かしいポプラ ”この時大学2年くらいで、班室に忍び込みODL日記とアルバムを回収した時のものです。byニッシー”"][/caption]

平日の放課後は班室にたまるか、駅前にある「ポプラ」という喫茶店で時間をつぶすのが定番だった。駅前にひっそりと佇む個人経営の喫茶店だった。マスターは常にテーブルの灰皿には消臭のためにコーヒーの出がらしを乾燥させたものを敷き詰めていた。消臭効果があるからと言っていたが、本当だろうか?
テスト前には高校生らしくポプラで勉強をしたりもした。語呂単という語呂合わせで覚える英単語の本が流行った。「indulge(快楽などにふけるの意)」の語呂合わせはこんなのだった。
「インド主(インドアルジ-> インダルジ -> indulge)は淫行に耽る」
本にはご丁寧にターバンを巻いたインド風の人がにやにやなにかをしている挿絵がついていた。インドでまじめに生きる方々、特にインド主の皆様に対してあまりに失礼な語呂合わせだ。
淫行のインパクトで僕らはindulgeという単語を完全にものにしたが、残念なことにテストに出なかった。それどころかmあれから10年以上、僕は人並み以上に英語に触れる仕事をしているが”インド主”には一度たりとも出くわした事がない。そもそも覚える必要がある単語だったのだろうか?

というわけでODLという名前のわりに、キャンプだけをしていたわけではなく、逆に屋内でダラダラしていたことが多かった。誰かの家で徹夜で麻雀したり、長野大の女の人と合コンしたり(!)、軟式野球班と険悪な雰囲気になったり、演劇班の劇を手伝ったりとヒマに任せていろいろな事をした。いろいろな事をしたので自分の過去を語る時に「OutDoorLife班に入っていた」と言い切る事に躊躇するのだとおもう。

*その後
高校卒業後、僕らはそれぞれ進学のため故郷を後にした。ODLのメンバーも今では結婚していたり、子供がうまれていたり、東京にいたり、上田にいたり色々な人生を送っているらしい。連絡も疎遠になった。

班長だった安藤は庭師という変わった職業を選び、その仕事の模様をブログに綴っている。地元では評判がすこぶるよく、僕の身の回りでは将来もっとも情熱大陸などの番組にとりあげられそうである。コンクリートに囲まれたオフィスで、ブログを通して、同じ釜のペヤングを食べた彼のぱきぱきとした仕事を見ると励まされる気がする。きっと他のODLのメンバーもそう思って自分の道で頑張っているのだと思う。

[caption id="attachment_2170" align="aligncenter" width="440" caption="ODL ふぉえばー"][/caption]