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Apr 14, 2009

一言でその場の空気をかえる言葉の力


世の中にはたった一言でその場の空気をガラッと変える才能を持った人がいる。


僕はそういう才能を持った人をこれまでの人生で3回だけ見た事がある。今日はそのうちの1つについて書きたい。



とある酔客のはなし


もう1年くらい前のこと都内のバーでお酒を飲んでいたときのことである。そこはマスターが二人のバイトとやっているこぢんまりとした飲み屋だった。


土曜の夜、僕らがわいわい飲んでいたところに突然大柄な男がひとり声を荒げて入ってきた。他の常連いわくマスターの奥さんの昔の恋人という非常に難しい関係の男らしい。時々やってきてはマスターに嫌がらせをするという駄目人間である。マスターも常連さんも無視を決め込んでいた。ところがその日は男も虫の居所がわるかったらしい、手近なテーブルを倒したり、他の客に体当たりしたり暴れだしたのである。


マスターはその男に「お願いだから帰ってくれ!たのむ!」といって男を店の外に導こうとするが、男は言う事をきかない。言い合いはエスカレートし、とうとうつかみ合いの喧嘩になった。マスターは説得をあきらめ、110番通報して警察を呼んだ。


男は通報された事に逆上し、さらに勢いよく店内の装飾をなぎ倒し始める。止めに入った客になぐりかかり、店内はまさしくテレビドラマのような修羅場と化した。なにしろ男の体格がいいので正直僕も身の危険を感じる空気だった。



警察がやってきた


そんな緊迫した場面に警察官が登場する。喧嘩ということでいきなり4人もの制服警察官が店に入ってきた。3人は体育会系の強そうな感じの若い警官。あと1人は芸能人で言うと我修院達也に似た小柄なおじさん警官である。


その場にいた全員の予想を裏切って、スタスタと一人で男に近づいていったのは弱そうな我修院似だった。僕らは彼が殴られるんじゃないかとヒヤヒヤしながら見守っていた。マスターと男の間にK-1のレフリーのように体をはさみ、男がなぐりかかるのを体で止めて我修院はこう言った。


「ちょっと、ちょっと~、どうしちゃったのよぉー(おかま口調)」


高くてよく通る声だった。



なぜそこでおかま口調???それはわからない。でも、この一言で張りつめていた空気がいっきに緩んだ。怒りに包まれていた男の表情も驚きのせいか、ちょっと間抜けな感じに変わった。我修院はその隙をついて男を店の外まで連れ出し、怒りのおさまらない男に「それじゃ、わからないじゃなぁーい」とおかまっぽく話しかけていた。それからほどなくして男は我修院に牙を抜かれたかのように静まり大人しく最寄りの警察署まで連れて行かれた。


店に残された僕らは我修院似の仲裁の見事さに乾杯した。強くみせることは強さではなく、賢そうに話す事は賢さではないのだと思い知らされた。



いつか誰かに「id:kkomiyamaさんの人生に影響をあたえた一言はなんですか?」と聞かれたら「ちょっと、ちょっと~、どうしちゃったのよぉー」と我修院のイントネーションを真似て答えたいと思う。


この日の出来事はそれくらい印象に残っている。