GWを使って4年ぶりに引っ越しをした。長らく使っていたスーツケース。脚ががたがたしていたダイニングテーブル、大事にしていた本、クリアしたゲーム、服、昔使っていたPalmやhpのiPaq、コンピューター3台、モニター1台、布団。みんな捨てた。
大きく吸い込む前には全部吐き出さないといけない。呼吸と一緒だ。そう考えれば空っぽの本棚もスカスカの引き出しも意味があるように思える。
[caption id="attachment_2398" align="aligncenter" width="300" caption="長年使った足裏をぐりぐりするもの。今回断腸の思いで捨てる"][/caption]
同僚の1人が退職し、母国に帰った。半年前から聞かされて、2人で退職に向けて準備をしていたので仕事にはまったくといってほど支障ない。ただ寂しくなっただけだ。とはいえ新しいメンバーも加わり楽しくやっております。
[caption id="attachment_2399" align="aligncenter" width="224" caption="別の同僚の熊本土産「アベックラーメン」を作った。おいしかった。これはあり!"][/caption]
祖父の米寿のお祝いに長野へ日帰り旅行をした。父方の祖父は僕がまだ小さい頃に亡くなったので、「おじいちゃん」というと自動的にこの祖父をさす。今後も祖母と2人元気に長生きしてくれることを願う。
[caption id="attachment_2400" align="aligncenter" width="300" caption="祖父が子供の頃の写真をデジタルフォトフレームにいれてプレゼントした。弟グッジョブ"][/caption]
4月の終わりにマレーシアのクアラルンプールへ出張した。マレー人と中国系とインド系のミックスとその根底を流れるイスラム文化が生み出す絶妙なマッシュアップと微妙な緊張関係と。マレーシアは楽しい国だ。
[caption id="attachment_2401" align="aligncenter" width="300" caption="屋台でお弁当うってた"][/caption]
マレーシアでもあちこちで日本への義援金を募っているが、下の写真は募金を使って折り鶴を折ってそれを日本に送ろうという企画の広告。ホテルのロビーにあった。
[caption id="attachment_2403" align="aligncenter" width="224" caption="被災地に千羽鶴がとどいたら悲劇だよ"][/caption]
アフリカに向けての準備は着々と。仕事のために黄熱病やらの予防接種を受けることになるとは10年前は想像だにしてなかった。写真の通り、黄熱病は緯度が高いところでは蔓延してない。
[caption id="attachment_2402" align="aligncenter" width="300" caption="病院に貼ってあった黄熱病確認地域"][/caption]
昨年異動したせいで出張が増えていて、7月終わりまで多分日本に半分くらいしかいない。そういう生活に自分が適応できるのか、経験がないので正直わからないんだけど、まぁやってみて考えることにしよう。
[caption id="attachment_2404" align="aligncenter" width="300" caption="前の家の近くのおいしいパン屋。いきにくくなったなぁ"][/caption]
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May 3, 2011
犯人はみんなも知ってるあいつだ! 書評「檻の中の少女」
主人公が情報セキュリティのエキスパートという一風変わったハードボイルド小説「檻の中の少女」。出版社から献本いただいたので読んでみた。おもしろいので日本のセキュリティコミュニティの人は読んでみて欲しい。
話の筋を大雑把に説明すると、ミトラスという自殺志願者とトリガー(自殺者の背中を押す人)の出会いサイトがあり、そこではメンバーのメッセージのやり取りだけでなくお金や証明書のやり取りもされていて、怪しい人たちが集う場になっている。このサイトのせいで息子が自殺してしまったという両親が主人公に調査を依頼するというストーリー。ミトラスの仕組みを理解するまでは若干読み進めるのがつらい。
セキュリティ業界の人が書いているので技術、法律、実在する組織などの描写はダン・ブラウンの小説やその辺の大作映画よりよっぽど正確になされていて、「ん?」とひっかかるところがなく、安心して読める。それはつまり、一般読者には難解ではないかと心配してしまうが、著者も難しいのは仕方ないと割り切ってるのだろう。
物語には現実と虚構とその中間にある少しの虚構が入り交じっている
現実とは、たとえばシステムがC++とJavaの組み合わせでできているとか、勉強会の後にルノアールで懇親会をして、しかもお会計をきっちり割り勘するだとか、サイバーディフェンスの人が実名で登場しているだとかそういった事細かな点である。エンジニアが使い捨てられるだとか、日本のセキュリティの専門家が金融に弱いとか耳の痛い現実も含めて、筆者は残酷なまでに現実を書き上げている。
少しの虚構というのは例えばNISCっぽい組織であり、まっちゃっぽい勉強であったりする。物語の舞台となるミトラスも実在こそしないが、今後もないかといえば誰もが明確には否定出来ない。荒唐無稽というよりはバーチャルリアリティに近い。
そしてさらに完全な虚構が存在する。つまりは殺人事件であったり、「少女」の物語(ここは最後まで読まないとわからない)という物語の核である。
この本を僕がセキュリティ業界の人におすすめするのは、この小説の舞台が僕たちにとってあまりに現実的であるために自分があたかも登場人物の一人になった感覚になれるからである。
普通の読者は「少しの虚構」「完全な虚構」の2つのレイヤーを味わうが、僕たちなら「現実」を含めて3つのレイヤーを行き来しながら、物語の中に自分自身を見出すことができる。小説の主人公になり切るのではなく、主人公と協力して真相に迫っていく気持ちが味わえるのはこの本の醍醐味である。
この本がヒットしたらきっと業界の人と飲みにいく時に「檻の中の少女よんだ?」という話になるんだろう。多分みんなが「このセキュリティ業界に美人女子高生なんてありえない!」と本作最大の脆弱性に突っ込むに違いない。それはそれで楽しそうだが、僕は「和田」派であると最初にここで明言しておく。