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Apr 2, 2015

3月の光景

アフリカ人の取引先から面白い話を聞いた。無私の精神を持つ素晴らしい政治家の話である。

アフリカ諸国は人工衛星を持っていない。それでも衛星を通じた通信は必要であり、諸国は毎年5億ドルの衛星使用料をヨーロッパの会社に支払っていた。これを先進国による後進国からの搾取と看破したあるアフリカの政治家がいる。

彼はアフリカ人によるアフリカ人のためのアフリカの人工衛星が必要だと訴えた。長期的な支出を抑えらるし、なによりも科学技術人材を育てるには自前でやるしかないと。
膨大な資金を調達するため彼はまず先進国の支援機関や世界銀行と交渉を重ねた。誰も面と向かってアフリカの人工衛星のアイデアを否定しないが、交渉はずるずると長引いた。衛星使用料が減ることを先進国が嫌ったのかもしれない。

そこで彼はアフリカ各国が自ら資金を拠出し衛星を打ち上げようとした。さしあたって4億ドルの大金が必要だった。衛星の必要性を認めつつも、資金を出すことを渋るアフリカの大国を前に、彼は自分の国がコストの大半をカバーすると言い切った。結果彼の国が3億ドル、南アフリカ共和国が9000万ドル、ナイジェリアが1000万ドルを拠出し、RASCOMという国際企業をたちあげ、新たな衛星を打ち上げることにした。本拠地はコートジボアールのアビジャンにおかれた。(アビジャンは個人的に苦い思い出残る土地である。)

RASCOMが試験的な打ち上げに成功し、いよいよこれからというところである政治家は政変により失脚し、「アフリカの人工衛星」の夢は頓挫した。
政治家の名前はムアンマル・アル=カッザーフィー。日本では残虐な独裁者カダフィ大佐として知られている男である。
カダフィはまたリビヤの若者が海外の大学などで学ぶ際の費用を政府が全額負担する仕組みをつくりあげた。若者達はその制度を利用し、留学し、そして皮肉なことにカダフィの独裁を批判するグループの中心人物となっていった。

全て人づての話である。細かいところは記憶違いもあるかもしれない。しかしいずれにせよ、カダフィの功績を評価する人が一定数いるということに私は驚いた。
カダフィに関して180度異なる見方があるように、この世には唯一の正義も純粋な悪人もいない。
世界から争いを減らすためには正義と悪という二項対立にとらわれない我慢強さ、そして「正義のため」という美名のもとに行われるあれこれを疑ってかかる謙虚さが必要だ。

チョー意識高い系である私は、人生の早い段階で、そのことをガンダムにおける連邦とジオンの対立から学び、そして今回の件で確信を強めたのである。

ガンダムもまた偉大である。

さて3月の写真を数枚。


2年ぶりのヤンゴン、ミャンマー。景気がよくて、街中建設ラッシュ

お昼休みに皇居で

川面を覆う桜の花びら。ドブ川にも春は等しく訪れる。